ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

関わりたくないパン

数年前のある朝、通勤電車の中で突然お腹が苦しくなった。

トイレに行きたい感覚とも違う、謎の痛みと苦しみに襲われた。

 

とにかくなんとか会社の最寄駅で降りることはできたが、駅のホームで全く動けなくなり、隅っこでうずくまってしまった。

 

僕がうずくまっている間に電車が2回停まったと思う。

降りてきたお客さんも何人かいたはずだ。

しかしその誰からも見向きもされなかった。

 

苦しい中でも頭ははっきりとしていたので、次の電車から降りてきた人になんとか話しかけ、駅員さんを呼んでもらうことができた。

 

結論から言うと、僕はその後救急車で病院に運ばれた。

幸い大したことはなかったが、初めての経験だった。

 

そして後から思い返す。

駅でお腹が痛くて苦しんでる時に誰も声をかけてくれなかった。

やはりみんな知らない人やわからないことになるべく関わらないようにしているらしい。

 

そして気づく。

担架で救急車まで運ばれる間、意識がはっきりしてた僕はジロジロとこちらを見ている目線を全て受け止めた。

さっきまで無視してたはずじゃなかったか?

 

結局誰も直接は何もせず少し離れた安全な所から見てるだけ。保身と傍観。

 

僕は嫌な思いをした。

それ以来、苦しんでそうな人がいたら声をかけ、救急車で運ばれている人を興味だけでジロジロ見ることはやめようと心がけている。

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