平成に関するインタビューで池上彰が最も印象的な事件はオウム真理教だと話していた。
昭和が終わり、バブルが弾け、この先どうなるかという不安に苛まれた若者達にとって、とにかく“信じていれば救われる”という頼みの綱としてオウムが機能していたという。
確かにいつの時代も安心したいという気持ちは誰の心の中にも同じようにあると思う。
僕らも日頃から気をつけるべきだ。
怪しい宗教なら警戒もするだろうが、それは人の不安な心にそっと近づいてくるものだと思う。
将棋の藤井聡太が破竹の29連勝という偉業を成し遂げた際、彼が幼い頃から遊んでいたキュボロというおもちゃが紹介され、瞬く間に全国のおもちゃ屋さんから消えていった。
その後も問い合わせ殺到、2年待ちという話も聞いたことがある。
ある知り合いのおもちゃ屋さんから聞いた話。お客さんが孫へのプレゼントとして「藤井聡太が遊んでいたおもちゃ」を買いに来たが当然売り切れ。代わりに似たようなおもちゃを勧めると「キュボロじゃないとダメ!」と断られたという。さっきまでキュボロの名前も知らなかったというのに!
僕はこの光景に前半の話と繋がるところがあると思う。
藤井聡太のような賢い子に育てたいからキュボロを買う、という心理なのだろう。
それは子育てに対する不安や逆に大きすぎる期待の表れなのだと推測できる。
同じものを与えておけば、自分が安心できるのだ。
でも実際は違う。
同じおもちゃで遊ばせれば将棋で29連勝できるようになるはずがない。
藤井聡太はそのおもちゃが大好きで夢中になって遊んだことが本人にとって良かったのだ。
有名人ではなく自分の子供を見てあげてほしい。その子が好きで夢中になれるものを見つけてあげることが本当の藤井聡太への近道ではないだろうか。
不安になった時、誰もが何かに頼りたくなるものだが、一旦立ち止まり、自分が楽に安心したいだけになっていないか考えることも必要だろう。