ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

音が聞こえない世界の振る舞いパン

竹芝にある「対話の森」に行ってきた。

ダイアログ・ミュージアム「対話の森®」

 

2年くらい前にラジオで「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のことを知って以来いつか体験してみたいと思っていた。

どうやらそこでは暗闇に身を置くことで視覚情報をなくした状態で他の聴覚や触覚情報を頼りに様々な体験をするという。

しかしその公演が終わってしまい、その後常設展が開催されるのを心待ちにしていたのが、この8月23日についにオープンしたというので、もうこれは行くしかないなと仕事を休んで行くことにした。

 

しかし「ダーク」は感染症対策の理由により開催できず、明かりをつけた「ダイアログ・イン・ザ・ライト」という形式で行われているということだった。これはこれで興味あるんだけど、僕は今回「ダイアログ・イン・サイレンス」を体験することにした。

 

「ダイアログ・イン・サイレンス」とは「ダーク」が視覚情報を閉じるのに対して聴覚情報を閉じて様々な体験をするというもの。ステイホームの期間中に手話を勉強し始めた僕にとって耳の聞こえない人の世界はかなり興味のあるものだったので楽しみにしていた。

 

いざ体験が始まると、ろうのアテンドさんが1人ついてくれて中でのルールについて説明してくれる。もちろん手話などではなく、絵やジェスチャーを使って“誰にでもわかるように”説明をしてくれる。

簡単に言うと、中ではイヤーマフをつけ、喋ったり音を立ててはいけませんよーみたいなこと。音が聞こえない世界を作るための重要なルール。

 

残念ながら中での体験は基本的に秘密事項なのでここでは書けないが、とても良かった。

参加者が互いに意思疎通するためにはとにかく「見る」しかない。言葉がない分、手も足も顔の表情も使って少し大袈裟なくらいに表現しなきゃ伝わらない。恥ずかしいなんて思っている暇はない。そしてそれがもの凄く楽しい!

 

最後に感想を話し合う部屋があったので僕は、今は皆がマスクをつけているから表情が読み取りづらくなっていること、マスクを外せばもっといろんなものが伝わる気がすることを質問してみた。するとアテンドの方は「マスクをしてても目や眉だけでいろんなことが伝えられる」ととてもポジティブな意見を返してくださり感動した。僕がマスクをしたくないから勝手にマイナスイメージに思っていただけだった。

 

そして後になって気がついたことだが、相手の表現を読み取るためにじっくり「見る」ことに集中している時、別の人が何かを表現しているのを見過ごしてしまっていたんじゃないだろうか。逆に、僕が伝えたい時に相手がこっちを見ていないと何をしても意味がないんじゃないだろうか。つまり会話を始めるにはまず肩を叩くなどして「向き合う」ことが重要なのだ。

 

聞こえない世界での振る舞いがまだまだ身についていないので、更に考えてみる。

f:id:mumusanopinojr:20200905231521j:image