ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

メキシコフィルターパン

「メキシコフィルター」という言葉を初めて知った。

ハリウッド映画などでメキシコ(に限らず埃っぽい途上国など)のシーンになると映像が若干黄色がかっていることを指しているという。

 

何のことかわからない人もいると思う。

僕もこれを聞いてすぐには理解できてなかった。

が、これを見てほしい。

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Netflixが公開した『タイラーレイク』の宣伝で、上が撮影シーン、下が完成シーンだ。

もちろんNetflixは「こんなに派手なアクションやってるよー!」と宣伝したかったのに、「めっちゃフィルターかかってるやん!」とツッコミが入った形だ。

 

この撮影はバングラデシュのシーンだったらしいが、これを知るといろんな映画でちょっと黄色くなっていたのを思い出す人は多いはずだ。

 

でもこれが何で問題なの??

と疑問に思う人も多いはずだ。確かにこういった映像効果によって説明を入れずとも別の国のシーンだと認識できてとてもわかりやすい。

しかし、この黄色いフィルターがつけられるのはほとんど貧しくて砂埃の上がるような国や場所のシーンばかりだ。するとそういったマイナスイメージが定着してしまい本当のその国のことがわかってもらえない。真実ではない先入観が生まれてしまう。

 

『ファクトフルネス』に、子供にメキシコ人の絵を描かせるとソンレレロを描く。今やメキシコでソンブレロを被るのは観光客くらいのものなのに。と書かれていたのを思い出した。

 

メキシコフィルターのことを考えてみる。

最初にこれをやった人はもちろん「わかりやすさ」で取り入れたんだろう。実際に観客にはよく伝わったのかもしれない。しかしその後作られた映画がこれを真似して追随するのがよくわからない。

映画を撮ろうという程の芸術家が、他の人がやってた「わかりやすさ」に頼らず工夫を凝らそうと考えなかったのだろうか。それとも考えた末にやっぱり黄色くするのがベストだったのだろうか。

 

考えてみれば日本のテレビ番組でやたらテロップが出るのも、外国人のインタビューの吹き替えが馴れ馴れしいのも、「わかりやすさ」を追求しすぎて現実が隠れてしまう一因じゃないだろうか。

 

ステレオタイプを生まないよう気をつけたい。