ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

コミュニケーションを大事にするパン

「遅いインターネット」というサイトでこの記事を読みました。

コミュニケーションロボットは人間の夢を見るか? | 根津孝太×近藤那央 | 遅いインターネット

 

このインタビューに登場する根津孝太さんは、ちょうど妻が見ていたドラマに出てきたLOVOT(らぼっと)というロボットを作られた方で、LOVOTがコミュニケーションを通して家庭の中に溶け込み、愛されていくという話から映画『アンドリューNDR114』のような世界が身近なところまで来ているような感覚になりました。

 

そしてこの「根津」という名前を見ている内にふと気づき、これまで交換した名刺の束を取り出しました。なんと2019年2月のドイツ・フランクフルトのメッセ会場付近の路上で日本人ですかと声をかけてくださったのが根津さんだったのでした。

根津さんは国際玩具見本市に出展なさっていたようですが、僕はこの時スケジュールが詰まっていて、しかも仕事上ロボットのゾーンには近づくこともほとんどないので(メッセ会場は物凄く広いんです・・・)、伺うことができず名刺交換だけの関係となってしまっていました。

 

しかしこうしてインタビューから再会できたのも何かの縁と思い、根津さんの著書『アイデアは敵の中にある』を拝読しました。f:id:mumusanopinojr:20210103184034p:image

 

根津さんは本書でもコミュニケーションを主軸に話を展開させていきます。

 

商品開発においても、チーム全体のコミュニケーションの大切さを説いています。

そもそも、自分のアイデアがベストであるという保証などどこにもなく、それを提示して議論が活性化して”皆で”より良いものに高めていくことの方が絶対的にベストに近いものになります。その為にはやはり積極的なコミュニケーションが必要ということなんですね。その中で自分とはどうしても噛み合わない考えや反対意見の人がいることもあるのですが、そういった相手からの意見こそ丁寧に聞き入れるべきというのが本書のタイトル「アイデアは敵の中にある」の意味なのです。

 

僕も仕事の中で、自分の考えと反する対応をされることがあります。そんな時に、相手がどうしてそうしたいのかを詳しく尋ねてみる、そうすることで双方の意見を取り入れた全く別の方法を考えることができた場面が何度もありました。

根津さんは2016年時点でこのコミュニケーションを交わす場は「電話やメールではなく、全員が同じ場所にいるからこそ可能になる」と書かれています。僕もこれに同意です。テレワークが推進される今、物理的に離れていても意見を交わすこと自体は可能かもしれませんが、互いの思いや雰囲気まではまだまだ伝わりきれておらず、”より良いものを”という結果に繋がっていないように感じるのです。

 

さらに本書では「こいつは異分子だ、と思う人や物事の中にこそ宝物が眠っている」とあります。自分にとって「敵」や「異分子」と感じる人は自分とは全く違う考え方を持っているということです。

 

しかし今、日本全体が、組織を管理しやすくするために、「例外を認めない」方向に向かっていることを根津さんは指摘します。つまり例外を認めると、その度に組織としての判断が必要になり、仕事効率が下がってしまうという理屈です。そしてその「効率」だけを求めた先にコミュニケーションが必要なくなってしまうことを問題視しています。新しいアイデアを生み出す際にはコミュニケーションが必須だと感じているからです。

 

ここで根津さんは「コミュ力」「コミュ障」という言葉をよく聞くようになったことに話題を移します。どうしてこういった言葉が使われる機会が増えたのか。

それはまさに、先の「組織を管理しやすくする」という方針の為に作られたマニュアルのせいだと言います。「マニュアルさえ覚えれば仕事ができる。マニュアルさえ守っていれば他の仕事をしなくても済む」という基準で人が働くことで「例外を認めない」を実行しているのです。

そうやって社会が勝手な枠組みを決めてしまい、そこから外れた人のことを「コミュ障」と呼んでいるのではないでしょうか。企業が求める人材像の「コミュニケーション能力」という言葉の意図もそこに含まれているのでしょう。

しかし根津さんは本書の序盤から一貫して、「例外」「異分子」にこそ物事をより良くするヒントがある、と言い続けます。

 

自分が相手を異分子と感じることも、逆に相手にとって僕が異分子に見えることもあるかもしれません。この本を読んで、僕はどんなにおかしな意見でもまず発信してみようと改めて感じました。たとえそれが全否定されたとしても、自分にとって発見があるということがわかったからです。仕事への向き合い方ももっと改善していけそうです。

 

そして本書最後に根津さんはこう書かれていました。

一期一会の出合いを粗末にするのは、ものすごくもったいない。

せっかく出合えた人との関係を感じ、考え、動く。それに尽きる。

この文を読んで無性に根津さんと再会したくなりました。

 

些細なきっかけから手に取った本でしたが、確実に読んでよかったと言えます。

線を引いた箇所は数知れず、自分の仕事や日ごろの考えと繋がる部分がいくつもあったので、次の記事に書こうと思います。

根津孝太さん、ありがとうございました。