ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

掃除時間のパン

小学生の頃、掃除時間が終わって次の授業の時間も1人で掃除を続けていた。

最初は先生がクラスの誰かを寄越して僕を呼んでくるようにしていたが、連日続くうちに先生もクラスメイトも、僕のことを「変わり者」として意識の外に追いやることにして、授業中に教室に戻る僕を気にしなくなっていた。

 

この時僕らの班に割り当てられた掃除場所は校舎の一部の廊下だった。

廊下の端から掃除を始めて、反対側に着く前に終了のチャイムが鳴る。

次の日もまた同じ廊下の端から掃除を始めて、途中で掃除が終わる。

妙に几帳面な性格を発揮した僕は、これでは毎日やり残しが出るから掃除をしたことにならないと考え、1人で残って廊下全体を掃除していたのだ。

僕の中では何も間違っていなかった。

 

中学に上がった時、掃除の件を知っている同級生から「また掃除するの?」とからかわれたこともあった。その時は気にもしていなかったけど、大人になるにつれ、妥協することや自分にとっての優先順位を考えるようになり、あんなに廊下の掃除にこだわっていた自分を恥ずかしいと思うようになった。

 

数年前、当時の友人と飲みに行った際にその話になった。僕は「アレはないよな」と半ば自虐するように昔の自分を嘲ったが、友人は違った。

「俺はあの時、先生に対してちゃんと自分の考えを言えて凄いなと思ってたよ」

そんな風に見てたのか。それを聞いて自分で昔の自分やるじゃないかと思えるようになった。

 

自分の意見を持ち相手に伝えるということは案外難しい。昔の自分を手本に、僕は頑張りたい。

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