エジプトのコメディアン、バセム・ユセフとエジプト社会を追ったドキュメンタリー。
元々外科医をしていたユセフは当時のムバラク政権に対するデモ活動の現場を知り、コメディアンに転身し、独裁政権下において初めての反政権コメディで人気を獲得していった。
彼はこう言う、
催涙弾や銃でデモは止められない。
だけど皮肉はいくら言っても血は出ない。
その後大統領が代わっても国民の代弁者になっていないメディアに嫌気がさし、自ら司会を務めるテレビ番組「ザ・ショー」を始める。
それが国民の感情に火をつけ、ついにモルシ大統領を陥落させる。
しかし次の相手はそうはいかなかった。
国軍司令官であるシーシの軍事政策を痛烈に批判した彼はついに目をつけられ、番組の中止を迫られる。
国内はシーシ支持派と反対派の真っ二つ。ユセフの事務所の前に抗議の人だかりができてしまう。
全てのテレビ局が全てのチャンネルでシーシを神の使いのように讃えてる。
僕は政府の代弁者にはならない。
僕の番組で権力者の責任を追及したい。
どんな人物が相手でも。
アナウンサーでもジャーナリストでもなく1人のコメディアンが番組で「我々は何も恐れない!」と言い放ち、風刺を効かせた皮肉を武器に番組を続ける。
ある日の放送中、テレビ画面が表示されなくなった。明らかに力のある者による電波妨害。
このテレビ局では放送できなくなった。
その後シーシは96%の支持を受けて大統領になる。
それでも諦めないユセフは協力してくれた別の局で「ザ・ショー」を放送。
そこで自分が政府から圧力をかけられており家族を危険に晒したくない旨を伝え番組は終わる。
その後彼は多額の損害賠償を請求され、家族を置いてアメリカに逃げてジャーナリストを教えている。
エジプトは大切な人を失ったようだ。
日本は、どうかしら。