朝井リョウの新著「死にがいを求めて生きているの」を読んだ。
ネタバレせずオススメとして書いてみる。
元々、伊坂幸太郎が発案した「螺旋」プロジェクトの一環で、“海族と山族の対立する国”の“平成時代”を担当するというテーマが与えられていた。
著者はこれについて、平成とは何かと考えた時「むしろ対立がなくなった時代では」という視点からこの作品を書いた、と話している。
作中には、かけっこで手を繋いで同時にゴールすることや、テストの成績順位が発表されなくなることなどについての描写が出てくる。
そんな“競わない”時代に生まれ育った登場人物と、彼らを取り巻く社会が重なり合っていく。
読んでいくと何度も共感する場面が訪れる。
「こういう人いる」「この気持ちわかる」
「あーやだやだ」「これもあるよなぁ」
誰もが持ち得る様々な感情がクライマックスで結集する。
同じ著者の作品「桐島、部活やめるってよ」と「何者」を足して何倍にも膨れ上がらせたような読後感だった。
現代社会とそこで生きる現代人の内心をここまで的確に描写した作品があるだろうか。
平成が終わったこのタイミングこそ読むのに相応しいに違いない。