ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

裁判官全員に×をつけたパン

衆議院選挙と併せて最高裁判所裁判官国民審査も行われた。

結論から言うと、僕は11名全員に×をつけた。

これからその理由を書いていきたい。

 

罷免されない

まず、日本国憲法79条の最高裁判所裁判官についての条文を添付する。

最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

④ 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

憲法79条に基づいて国民審査が行われ、③に書かれたように、過半数の用紙に×を付けられた裁判官は罷免(この言葉はあまり馴染みがないと思うんだけど、つまり「解職させること」)となる。

しかし、これまで罷免された裁判官は一人もいない。

その理由として、「不信任を示すには×、何も書かなければ信任」という形式と、最高裁判決についてそもそもほとんど報じられていない点がある。

つまり裁判官の働きが見えていないのに×をつけづらい心情が表れてしまっているんじゃないだろうか。(ちなみに最も高い不信任率で15.17%)

今回で25回目になる国民審査で誰も罷免されてなくて、不信任率も低い状態だと、実際のところ国民審査なんか気にしてる裁判官いないんじゃないの?と思ってしまう。

制度が有名無実化している。

 

偏った裁判官

次に、裁判官の年齢が気になる。そんな決まりはないのに全員そろって60代なのだ。②に書かれているように国民審査を1度受ければその裁判官は10年間審査の場に上げられることはない。ちなみに⑤に書かれた定年は70歳だからまずもって2回目は存在しないということになる。

つまり最高裁裁判官になってすぐ国民審査が行われれば、判断材料が少ないまま信任されあとは定年まで安泰ということになってしまう。

最高裁判所裁判官には40歳から任命できるのに、過去50年間で60歳未満で任命された裁判官はいないという状態なのも年齢の偏りという意味でちょっとどうかなと思ったりする。

さらに年齢だけでなく性別にも偏りがある。最高裁裁判官15人のうち男性が13人を占めているのだ。当然男性だからといって裁判官ともあろう立場の人が女性の味方にならないことはないだろうけど、もう少し比率が変わってもいいんじゃないの?とは感じる。

そしてそして、15人の構成に関して「裁判官出身6人:弁護士出身4人:学識者5人」という枠組みが規定はないのに慣例となっていることも指摘される。例えば弁護士出身者が増えれば判決が変わる可能性もあるからだ。

何より先の条文の①で「裁判官は内閣が任命する」ことになっているので、権力側に不利益をもたらすような意見の者が最高裁裁判官になることはないというのも偏りと言えるのではないか。

 

各裁判官の判断

本当は、審査する側の国民はそれぞれの裁判官がどんな判断を下してきたのかを知った上で信任不信任を決めるべきなんだろうけど、実際年間7000近くの事件を15人で担っている状態のため、それらを全て追うことはほとんど不可能に近い。

その中でも関心度の高い訴訟はメディアでもよく報じられるので、そこで出したそれぞれの判断を材料にして国民審査に臨むのがせいぜいだろうと思う。

僕も実際夫婦別姓訴訟についての違憲・合憲それぞれの見解を読んだことはあるけど、正直言ってどちらも一理あって個人的に判断の難しい内容だった。となると誰を信任して誰を不信任とするか余計に悩ましい。

 

というわけで、

僕はそもそも今の制度には疑問を持っていて、もっと良くなる道がありそうなのにそうしないのは変だなと感じていることと、

僕よりさらに最高裁判所に詳しくて強い意志を持った人の不信任の判断が反映されればいいなという理由から、

11人全員に×をつけるという判断をした。

ふざけるなと言う方もいるかもしれないけど、罷免の可能性が高まれば裁判官もよりいい仕事をしようとなるだろうし、今後もっと詳しく裁判官の判決について考える要素が増えたので、今のところベストな判断だったなと勝手に満足していたりする。

 

難しい言葉で書かれた資料をいっぱい見たから疲れました…

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