樹木希林最後の主演作『あん』
前から気になってはいたけど、ちょうど新聞で紹介されていて背中を押されるように観た。
千太郎が営む小さなどら焼き屋のバイト募集にやってきた徳江おばあさん。一度は軽く遇ったものの、また来ては自作の粒あんを置いて帰っていく。そのあんがあまりに美味しい為、採用すると店は大繁盛に。しかし徳江がハンセン病を患っていたことが判明し、さらに千太郎の過去にも話が及んでいく…。
という物語。
決して派手な映画ではないけれど、映画『日日是好日』で見せたお茶の先生の演技同様、粒あんを作る樹木希林の職人気質な雰囲気が本物っぽくて凄く良い。
そして今も続くハンセン病に対する差別観を考えずにはいられなくなる。元患者達が暮らすコミュニティは人里離れたところにある。見た目に“普通”ではないところがあることは一般社会では生きづらいのだというのはわかるが、だからこそ僕はそういう人も一般社会に混ざって欲しいと勝手に考えてしまう。日常にそういう人がいないから差別観が増していくんだから、当たり前に時々見かけるくらいの方がいいはずだ。そして社会の側も自分達より下の世代に病気や障害で見た目が違うことを正しく伝えていくことが大事なんだ。腫れ物に触るような対応は望ましくない。
最近の時事に無理やり繋げるようだけど、黒人差別がなくならないのも近いものがあると思う。教育がうまくいっていないんじゃないだろうか。更には、ずっと差別を受けてきた黒人の親世代が子供世代を白人のコミュニティに行かせたくないという思いもあるはず。その考えも否定すべきじゃない。だけど、だからこそ、僕らはもっともっと考えていかなくてはいけない。