映画「風が強く吹いている」を観た。
前に原作小説を読んでいたから登場人物のキャラクターも話の展開もわかって観てたけど、映画だけ観た人はどう思ったのかな。
僕はこの本を読むまで箱根駅伝を全く知らなかった。正月になんかやってるよね、くらい。
この本で箱根駅伝のルールを知ったし魅力を感じることができた。読んで良かった。
でも、映画は少し物足りなかったかな。
原作本を映画化した時に必ず感じることなんだけど、やっぱり2時間に納めると描けない部分が出てしまう。
この作品でいえば10人のメンバーのキャラクターがまさにそれ。小説では彼らの人となりがじっくりと読み手に伝わってから大会の場面になっていくけど、映画だとどうしてもざっくり紹介したみたいに見えてしまった。神童なんてみんながざわざわしてる中で紹介されただけで、原作読んだはずの自分を疑ってしまう程あっさりしてた。
そして、改めて見るとやっぱりこれは小説だし映画だよなぁと感じる。
そりゃ予選会で箱根の出場権を勝ち取るし、そりゃどんなアクシデントがあってもゴールするよね。じゃなきゃ物語が成立しない。
ラストの足を引きずりながらゴールを目指す場面で、前回の箱根駅伝でケガをしながらタスキを繋いだ一件を思い出した。
この件についてマラソン選手の大迫さんが「感動」で片付けてしまうことに警鐘を鳴らしていた。
確かに、チームの為に我が身を犠牲にすることを「感動」と受け取っていいのかと疑問が湧いてくる。ケガをすれば選手生命が終わるかもしれない場面であっても、自分1人のことで「棄権」の選択をするのは当然難しい。
そういったことの前例を作ったと言えるのが、今年の高校野球の大船渡高校だと思う。今後プロで活躍する可能性のある佐々木選手の肘を守ることでチームの甲子園への道が幕を閉じた。
結局のところは選手と監督が決定権を持っていて、当人が納得していれば続行でも棄権でも非難されるべきではない。観客の感動なんか二の次でいい。
たとえ映画でも感動の押し売りになってはいけない。でも観て良かった。
ふと思ったんだけど、海外にはマラソンやリレーはあっても駅伝ってないよね?
野球はあるけど甲子園みたいな異常に価値が高まった舞台はないよね?
日本人が好む「◯◯の聖地」と「チーム精神」が合わさった時、恐ろしい事態が待っているような気がする。