ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

数字の風景パン

以前、交番前の「昨日の交通事故負傷者数・死者数」を毎朝見るのが習慣になっていた。

何があったか詳しくはわからないけど、その数字にはその日も元気に生きているはずだった人が表されていることに心を痛めていた。

そんな僕も日々の忙しさに追われるうちにいつの間にか交番前の表示に目が行かなくなり、ただの町の風景として見過ごすようになっていた。

 

夕方のニュース番組を見ていると「CMの後はコロナ最新情報」と銘打って、結局のところ「今日の新規感染者数は◯人です」とお知らせする程度で何も“ウイルスに関する最新情報”はなく次のトピックへと流れていく。

 

この連日報じられる「今日の新規感染者数」が交番前の「交通事故死傷者数」のようになっていっていると感じる。

最初は「10」という数字に怯え始め、「100」を超えると街頭インタビューで驚きの声が上がっていた。にも関わらず今では「200」すらもしかすると「減った」と感じる人もいるかもしれない。みんなが慣れてきている。

 

しかし忘れてはいけない、その数字には一人ひとりの個人があるということ。感染がわかったことで幼児や高齢者のいる家庭は困り、仕事に穴を開けることへの情報伝達をどうするか、自分の行動範囲を振り返って誰かに迷惑をかけていないだろうか、これら以上に様々なことを考えさせられるだろう。

 

毎日表示される数字がただの町の風景にならないように、僕らは少しずつ自分ごととして考えておかなきゃいけない。

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