ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

場末の定食屋パン

1年ほど前。用事を済ませた後、近くに定食屋を見つけて妻と遅めの昼食を摂ることにした。

14時過ぎで客もまばら、というか照明は薄暗くタバコの煙が漂っていてテーブルに突っ伏して寝ている人もいるなど昼間っから場末感のある店だった。

特にときめくようなメニューもなく、とりあえず2人前の注文を済ませて待っていた。

 

定食が運ばれてきた。そんなに忙しくもないはずなのにちょっと遅いなと感じたのはグラスのお冷が空になったせいだ。

それでもようやくありつけた本日の昼食、むしゃむしゃと食べていると妻が一言、

「なにこれ・・・」

なんとコロッケ定食の白ご飯の中に、白いプラスチック片が入っていた。

それはまさにドレッシングなどの使い始めの際に指をひっかけてグッと力を入れて剥がす”あの部分”だった。

 

いやこれはあり得ないだろうと店員を呼ぶ。最初はバイトらしき若い店員に話をすると、奥から店長が来て別のご飯と交換してくれることになった。妻は元々小食でもうご飯はいらないと断ったが、それでも別のご飯を持ってきた。

さらにその数分後にはオーナーと料理長が出てきてめちゃくちゃ謝られた。正直こんなに謝られると思っていなかったのだが、後からわかってきた。もしかすると今の時代SNSで酷く書かれることが店の売り上げに直結することもあると考えているんじゃないだろうか。僕らはわざわざそんなこと書かないよ(今書いてるけど)。

 

そして会計時、レジにさっきのオーナーが出てきた。

「お代は要りませんので」

「いや、僕の分は払いますよ」

「いえ、お2人分ともいただきません。その代わり・・・」

僕は心の中で「来た!SNSに書かないでって言われる!」と身構えた。

「その代わり、またご来店ください」

ちゃうんかい!拍子抜けして「はい」と苦笑いしながら店を出た。

 

帰りの電車で考えた。これおかしいぞ?

「食事に異物が混ざっていたこと」の”代わり”が「お代要りません」のはずじゃないか?

「お代要りません」の”代わり”に「またのご来店」はこっちが譲りすぎている!

 

まぁこんなトラブルがなかったとしてもまた行きたいと思える店ではなかったんだけど。

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