1ヶ月ほど前、数年ぶりに大学時代のゼミの教授にメールを送った。もう僕のことなど覚えているはずもないのでかなり悩んで文面を構成し、勇気を出してメールを送信した。
すぐに返信があり、日程を合わせてオンラインでお話しすることが叶った。
近況報告をすると、大学時代に留学したドイツに今も仕事上の繋がりがあることと、今のおもちゃの仕事への考え方について「卒業後、そういう精神を持って働いていることが嬉しい」と言ってもらえた。
その話の流れで「ゼミの時にHARIBOのグミを配ったのを覚えてるか?」という話になった。
日本でもよく知られているHARIBOのグミ。何と言ってもあの硬さが特徴だ。日本の多くのグミの柔らかさと比べてHARIBOはかなり硬い。この硬さには、メーカーの「子供の咀嚼力を鍛える」という意図があるのだと教えてもらった。
この「咀嚼力」という言葉が僕の中で腑に落ちた。
これは単に「噛む力」のことだけを言っているのではなく、「物事を正しく理解する力」とも受け取れる気がした。
最近、少しでも難しさや長さを感じる本や作品は避けられる傾向にあり、それらをわかりやすく「嚙み砕いて」説明するものがあまりに増えているように思う。そういうものが必要な場合もあるだろうし役に立つけど、今はあまりに多い。そしてそれで「飲み込んだ」気になってしまって自分で「咀嚼」する機会が物凄く減っているように感じていた。
やっぱりこの「咀嚼力」はすぐに強くなるものでもないし、当然柔らかいものばかり食べていては落ちていく一方だ。
何もかもが柔らかく作られ簡単に飲み込めてしまう世の中に対するHARIBOのアンチテーゼを強く感じながらグミをもぐもぐしてみる。