ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

エストニアパン②誰何思

かなり前に書いた記事

エストニアパン① - ソートベーカリー

の続きを書いてみる。

実は旅行で撮影した写真がほとんど消えてしまったことで書くことをやめてしまっていた。しかし自分の経験や思考を覚えているうちになるべく残しておきたいので書く。

 

実はエストニアを選んだ理由はまだ他にもある。

当時僕の周りにいたほとんどの人が約束を守らないことにいろいろ感じていた。時間通りに現れることの方が寧ろ珍しい。「今起きた」とか「予定が入った」というメッセージを平気で送ってくる。

そうして周囲から何度も約束を反故にされたり、長い期間嘘をつかれていたり、独りぼっちの時間を過ごしたりしてきた結果、僕は誰からも何とも思われていないように感じるようになってしまっていた。人を信用することができなくなっていた。

そんな僕がエストニアを旅行するにあたって自分なりにテーマを設けてみた。

「日本で誰からも何とも思われていない人が、日本で誰からも何とも思われていない国に行く」

実際僕の周りにエストニアの場所を知っている人は一人もいなかった。

 

旅行前日。

旅行の買い物を済ませた帰り道、地下鉄のホームへの階段をベビーカーを抱えたお父さんが降りていた。ベビーカーで視界が塞がれていたために、そのお父さんは前を歩くおばあさんを突き飛ばしてしまった。テンパったお父さんはその場にベビーカーを置いてオロオロしており、後ろから来た人たちが閊えていることに気づいていなかった。こういう光景を見ても何とも思わない人もいるだろうが、僕は自分に何かできることがあったかもしれないと考えてしまいモヤモヤしたまま帰宅する。全く存在に気づかれなかったそのおばあさんがなんとなくその時の自分と重なった。

 

そして僕はもしかすると明日からこういったことにいちいち気を揉むことなく過ごせる世界に行けるんじゃないか。なぜかそんな期待をして旅行の準備をしていた。