ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

レンタル世界パン

朝井リョウの短編「レンタル世界」

 

直前まで読んでいた本が学術的な内容のものだったせいもあって、これを読み始めるとあまりにテンポの良いストーリーに入り込んでしまい電車を乗り過ごしそうになった。

 

なかなかナイスな紹介文だ。

 

本当に数十分で読めるのでオススメしたいし、その中で人それぞれ自分の経験から何かを考えるだろうなと思う。

 

巷に溢れる「レンタル業」を扱った本作。

彼氏や彼女、友人などリクエストした人間関係になりきってその日を過ごすという商売。

そんな商売があることは以前から度々話題にはなるけど想像もつかない。

 

作中に説明されるが、このレンタル業の利用目的は大きく2種類に分かれる。

ひとつは、とにかく擬似的な人間関係を楽しむため。つまり自分で自分を騙すために他人をレンタルする、というもの。

友情や恋愛感情を感じる目的。

もうひとつは、第三者を騙すために他人をレンタルする、というもの。

これが目からウロコだった。

例えば結婚式で相手方には友人が多いのに自分には少ないとバランスもよくないし恥ずかしさや信用にも関わるので友人役をしてもらったり、口うるさい親や親戚に会うタイミングでお見合いの話を出されないために取り繕う目的で恋人役になってもらうというようなことだ。

 

今までそんなレンタルなんて利用する人がいるのかと懐疑的だったが、めんどくさい場面を乗り切るために一時的に利用するということはあるかもしれないと思えてきた。

 

結婚式の招待客って、新郎新婦を間接的に評価する重要な要素なんだよ。新郎も新婦も、結婚式に来てるお互いの友人を見て、お互いの人間性を信頼する最後の判を押してる感じ

 

自分自身はもう友人が少ないことを何も隠すつもりはないが、仮に結婚相手に沢山の友人がお祝いに駆けつけたときにバランスが悪いだろうなという想像はできる。

そんな時に友人を数合わせするべきなのだろうか?そんなことを考えてしまっていた。

 

けど、結局は本音をぶつけ合った人としか繋がることはできない訳で。

その場しのぎの人間関係の虚しさも同時に考えてしまったりする作品だった。

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