ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

マラウイと日本パン

映画「風をつかまえた少年」

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アフリカのマラウイという国の小さな村で飢饉に苦しむ中、風力発電を自作して村を救った少年の実話。

 

このあらすじが全てだけど、見るべきだと言える場面がいくつかある。

 

①雨が降らずトウモロコシ畑が枯れて食糧難に襲われ、村全体が困る。そんな中で木を伐採すれば多少のお金が入るとという話に数人の村人が流されてしまう。「おい!裏切るのか!」と同じ村で暮らした者達が分裂し始める。

どちらにも言い分がある。“今”を生き延びるのに必死な人もいる。悲しいけど次にいつ雨が降るかわからない以上、誰も責められない。

 

②物価が上がり1日の食事の回数が減る。ウィリアムは学費が払えず学校を追い出される。それでも好きな理科の授業を受けるために学校に忍び込む。

貧しい家庭の子は学ぶ機会すら与えられず、結局また貧しい家庭を築く以外に道がない。完全なる負の連鎖。学校こそ無償化が求められるべきだと思えた。

 

③政府の対応に意見した族長が裏でボコボコにされる。時の権力に逆らうことは許されない。

 

そう、これは2001年のマラウイの物語のように見えて実は2019年の日本と重なる部分がいくつもある。

①は沖縄の基地建設や各地方の原発に賛成反対で分裂する市民の抗争。

②は消費増税によって日々の生活が締めつけられ、いくら働いても充分な収入が得られない貧困家庭の増加。

③はまさに先の選挙で演説の邪魔をしたなどと警察が民間人を引き離した場面。

 

アフリカの貧しい国の話だ、などと切り捨てられないほど身近な物語のように僕には感じた。

映画ではこの苦しみを脱するために1人の男の子が立ち上がる。もちろん周囲からは物凄い非難を浴びる。その上で夢を追い続け、ついに村を救う力になる。

こういう人になりたい、こういう人を応援したい、日本のウィリアム君を育てなければいけない。皆が心に刻むべき映画だと思うのでお勧めしたい。