ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

大晦日の花火パン

ドイツの年越しを経験したことがある。

 

当時は知らなかったんだけど、クリスマスが過ぎて大晦日までの間にスーパーでは大量の花火が棚に並べられ、面白いくらいみんなそれを買っていく。

 

そして大晦日の夜、ドイツ人の友人に連れられて人口の多い隣町へ出向いた。

あちこちに警察が待機していてなんとも物々しい雰囲気の中を通り抜け、丘の上で年越しの瞬間を迎えた。そこには100人以上の人が集まっていた。

 

そろそろ年越しを迎える頃、暗闇の中で誰かが叫び、それを合図にみんな花火に火をつけた。

ぴゅ〜ドカン!

ドカン!ドカン!

あっちでもこっちでも

ドカン!パン!ドカン!パン!

物凄い音と光と熱気が僕を包み込んだ。

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日本の年越しの、静かなお寺から聴こえる

ゴ〜〜〜〜ン

のイメージからかけ離れすぎている。

(ついに除夜の鐘すら騒音だとクレームを受けたりするというのに!)

 

そして丘の上から見える遠くの方でも花火が打ち上げられているのがよく見え、多分あそこが街なんだろうなとすぐにわかる。

 

そして丘を下りて街中に出るとそこでもみんな手にロケット花火を持って建物の壁に向けて発射したり、空のビール瓶にロケット花火を仕込んで爆発させたりしていて、この危険度はもはや戦争じゃないかと恐くなったのを覚えている。

 

 

何年も前に経験したドイツの年越し花火をどうして今思い出したかというと、実はドイツの中でもこの花火を制限すべきという意見の人が大半だということを知ったから。

 

そりゃそうだ。

街に警察が出るくらいの大騒ぎだし、どこもかしこも爆発してりゃ怪我人は出るだろう。

あの日僕の真横でロケット花火に火をつけたドイツ人がいて、何故か花火が飛ばずその場で爆発して咄嗟に背中を向けたのも覚えている。

怪我や火傷をしなかったとしても音で耳をやられてしまう人もいるだろうことも考えると「楽しい」と「安全」のバランスが明らかに間違っている。

 

更にそれだけの花火を打ち上げた後の元日の街には誰もおらず、ただ大量のゴミが散らかっていた。当然か。

 

更には、年に一度突然起こる爆音や大量の煙によってペットや野生の動物を刺激してしまう問題もあるという。

 

だからといって全く禁止にしてしまうと、花火のメーカーや街の清掃員の収入が減ることにもなるだろうと想像がつく。

とはいえあの騒ぎはやはりどうかしてるので、やっぱり花火は個人で打ち上げるよりも、職人が作った大玉をみんなで集まって見上げる日本の習慣が理に叶っていると思うんだよなぁ。