ターシャ・テューダーというおばあちゃんがいた。
昔NHKで番組をやっていたから覚えている人も多いかもしれない。
とにかく彼女の住む家の素朴さ、よく手入れされた庭の美しさ、そののんびりとした暮らしぶりが魅力的だった。
何年か前にドキュメンタリー映画が公開され、その中の彼女の言葉が胸に刺さった。
写真じゃなく、実物を見なさい。
人生は短い、不幸でいる暇なんてない。
やりたいと思ったらまず始めなさい。人に何を言われても貫くの。
人は気に入らない所から出て行くことができる。
地元の名士の家に生まれ、華やかな世界を味わいながらも農業がしたいと田舎暮らしを始めた彼女ならではの言葉だ。
そしてこれは彼女が亡くなった後を生きる僕らの背中を押してくれるような気がする。
彼女の庭は本当に美しい。
いつかこんな暮らしに憧れる人は多いと思う。
実際僕も何度も思ったことがある。
特に今のように感染症で好きに外出もできず、政府の対応に苛立つ毎日を過ごしていれば、こんな俗世から隔絶された場所に行ってしまいたいと考えて当然だろう。
その一方で僕はこんなことも考える。
たとえ自分が俗世から離れたところでのんびりした暮らしをしたとしても、世の中で苦しい思い辛い思いをする人が減った訳じゃない。ただ自分から見えなくなっただけ。
それでいいのだろうか。
僕の心のざわめきはおさまりそうにない。