ミヒャエル・エンデの『モモ』
読めば読むほど心に刺さる一文に出会う。
街の大人達が「時間を節約せよ!」をスローガンに忙しなく日々を過ごすようになっていき、
仕事が楽しいかとか、愛情を持って働いているかなどということは、問題ではなくなりました。むしろそんな考えは仕事の妨げになります。
大事なことはただ一つ、出来るだけ短時間に、出来るだけ沢山の仕事をすることです。
そんな考え方が皆の心に棲みついた結果、古い家が壊されて“余分な物の一切付いていない新しい家”が建っていく。
どの家も全部同じに作ってしまう方が、ずっと安上がりですし、時間も節約できます。
見たことあるよ!同じ形のアパートがいっぱい並んで建てられていく所。まさにアレのことを言ってるよね!それぞれ違う趣味趣向の人が住む家のはずなのに同じ形のものがどんどん生まれていくのは不自然に思えてきた。
Netflixに『世界の摩訶不思議な家』ってシリーズがある。森の中や岸壁の上など一見驚くような場所に建てられた家を紹介していく番組で、デザイナーや家主のこだわりと自然環境がうまくマッチしているところが見所だ。
実際にこんな家を建てようとはならなくても自分が住む家について、何部屋欲しいとか、こっち側に窓があるといいなとか、お気に入りのスペースを作りたいとか、各自異なるイメージが必ずあるはずだ。
「住む」、それも「快適」に「暮らす」ということに関してあまり考えることなくただ「時間」と「値段」だけを追って大量生産された家はなんだか味気ない。
住居以外のことについてもついついそういう気持ちを忘れてしまいそうになるからこそ、時々こういう一文に心を洗われるのは大切なんだ。