ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

これは決して奇跡じゃないパン

映画『チリ33人 希望の軌跡』を観た。

f:id:mumusanopinojr:20201121221957j:image

 

2010年に起きた鉱山の落盤事故を扱った映画だ。

当時、朝のニュース番組で毎日毎日話題になっていたので知っている人も多いと思う。

直後に出版された本『33人 チリ落盤事故の奇跡と真実』を読んだことも思い出した。

 

今回、映画を観たことで改めて33人全員が無事救出されたことの凄さを感じた。

 

そもそも、地下700メートルの空間に33人が閉じ込められるというシチュエーションだけで自分ならもう限界を迎える。絶対にパニックを起こすだろうし、おかしな行動に走ることもあり得る。

そんな状況にも関わらず、この33人は比較的落ち着いており、まずは崩れた岩石を取り除く作業を始めたという。さすが鉱山作業のプロだ。

しかしすぐに道を塞いでいるのが巨大な岩の塊だとわかり絶望する。作中ではこの岩はエンパイアステートビル2個分の大きさとまで言われている。

 

更に残された食料は30人×3日分のみと明らかに足りていない状況で、全員が納得して平等に24時間にほんのひと口ずつ分けることで1日でも長く生き延びようとしていたことも驚く以外にない。

 

こんな極限状態から助かることができたのは33人それぞれが自分の役割を持って協力したからに他ならない。

全員を取りまとめるリーダー役や、多少の医学知識を持ち手当をした医者役、穏やかな気持ちで皆に祈りを勧めた牧師役など、各自ができることをしていったのだ。

 

さらに映画では地上の人々の思いも描かれている。当然作業員の家族や親戚は一刻も早く助け出せと会社に詰め寄るが、長年鉱山で仕事をし事故を見てきた者たちは“鉱山事故で生き残った者はいない”ということを知っていた。実際年間1200人が事故で亡くなると言われている。

その両者の温度差を埋める役割をするのが担当大臣で、可能性がある限り捜索作業を指示するのだが、そこはやはり現場の知識が上回り、硬い岩や地質によってドリルの角度が変わって地下で助けを待つ33人のところに辿り着かない。

 

そんな地上でも地下でも精一杯の努力がなされて遂にドリルが届き33人が生きていることがわかったのが事故から12日目のことだ。“奇跡”と言ってしまうのはおかしい、みんな最高に頑張ったのだから。

 

これを見ると自分がどんなに苦しい思いをしてもここまでじゃないと思えるし、どんなに頑張っても彼らほどやってないと感じられる。

そして何よりチームワーク、協力することの大切さも教えられる。

映画として演出され過ぎている感じは否めないけど、それでもとても励まされる作品になっていて僕は好きだ。