凄く面白い!という触れ込みで読んだけど、なんとなく読んでいるとただの恋愛小説。
凄く面白い訳でも全くつまらない訳でもなく、ありふれたラブストーリーが進む。
舞台は1980年代で各章のタイトルが当時の流行歌になっていて、そのフレーズが若干物語に絡んでる程度。
読了後は「あれ、こんなもん?」と呆気にとられた気持ちになる。
その後風呂に入った。
浴室で不意に「ん?あの場面…」と思い浮かぶ。「じゃあアレは?」「てことはアレも?」と頭の中で連鎖されていく。
早く風呂をあがって確かめたい!
半ば急ぎ足でしまいかけた本に向かい、パラパラとページをめくる。
そうだ…!アレもコレも伏線だ!
ようやくわかった。この本が評価されている理由が。うん、凄く面白い!
我ながら完璧に作者の思い通りの楽しみ方をしたように思う。
後にこの本は映画化された。
正直言って小説の映画化は好きではない。
ただ、あの本をどう映像化したのかが気になった。「小説」だから表現できた仕掛けだ。
映画になって良かったことがある。
小説で各章につけられた80年代のヒットソングが実際に劇中で流れた。
これは確かに「映画」だからできる表現だ。
しかし肝心の物語の部分が残念だった。
自分が既にオチを知っていることを差し引いても納得がいかない。
というのもエンディングで伏線となった場面をわざわざ示していたからだ。
とても残念に思う。
確かに映画には「あっと驚くラスト」が必要なのはわかるけど、この作品についてはそんなもの要らなくて「何でもなく終わった…」感からの、「あれ?」と思う瞬間が楽しいのに。
この本の興味深いところは、読み終えた後にいくつかの伏線に気づく中で、「もしかしたら他にまだあるかもしれない」といつまでも疑ってしまうところだと思う。
それが映画のエンディングのように答え合わせが提示されるのはただただもったいない!
というか、映画の宣伝文句が「あなたは必ず2回観る」なんだけど、答え合わせがあるなら2回観ないよね。
とにかく、本を読むことをお勧めする。
面白いから!