ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

エストニアパン⑥船

汗をかきかきようやく第2ターミナルに着き、予約していた番号を券売機に入力。すると簡単にチケットが発券できた。ゲートもQRコードをセンサーに通すだけ、人が全くいなくても成立している。

2階のターミナルデッキに出ると船が既に準備をしていた。しまった、もう近づきすぎていて全体像を写真に撮れない。そしてこの海の向こうに死にたいくらいに憧れたあのエストニアがあるんだという大きな大きな期待とは裏腹に空はだんだんと曇っていく。

 

いよいよ搭乗、その場にいた全員がぞろぞろと乗り込む。入り口で大柄な職員がチケットとは別にパスポートを確認しているように見えたのでカバンから出そうとしたら僕は見せずに通れた。なんでだろう。そしていよいよ船に乗るほんのわずか2歩手前で急な土砂降り、そして雷鳴。こんなのRPGの演出としか思えない。船からの景色を楽しみにしていたのに窓に大雨が打ち付け全く外が見えない状態になっていた。小さなスーツケースとはいえ荷物を抱えて階段を何階も上るのはきついし、船内をウロウロもしづらい。とりあえず2人がけの席に着く。お腹が空いたので船内のバーガーキングに並んで注文。前にいた少年に倣ってケチャップとマスタードを挟んで食す。やっと空腹を満たすことができた。コーラが多くてうまい。どうせ何も見えないので読書をして過ごす。

 

ふと窓の外を見ると雨が止んでいる。これはチャンスだと思い荷物を置いたまま船尾に出てみる。すごい!大海原を疾走する船。風に靡くエストニア国旗。ちょっと寒いけどずっとここにいたいと思える。それくらいの感動だった。でも寒い。さっきの席に戻ったが眠くなってきた。よく考えると日本時間ですでに深夜3時頃だ。眠くて当然だ。寒くて体温が下がり友人から助言されて持ってきていたウルトラライトダウンを初日から着ることになる。机に突っ伏して少し寝る。

 

ん?と何か違和感を覚え目を開くと周りには誰もいなかった。既に船はエストニアの首都タリンに着き乗客は船を降りていた。変な恥ずかしさを感じ焦って船から降りた。