ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

エストニアパン⑧朝散歩

昨夜アニャが飛行機に間に合うために朝早く出るとは話していたが、僕もその音で5時に起こされてしまう。アイリーンが起きたら散歩に誘おうと思っているとロビーが帰ってきた。今まで飲んでたのかよ!やっぱり行かなくて正解だった。そして彼は耳栓とアイマスクをしてベッドに入った。今から寝るのかよ!目が覚めたアイリーンに声をかけるとまだ寝る方を優先されたので朝6時一人で散歩に出かける。

 

道路を渡った先に大きな広場がある。まだ朝早いからか掃除のおじさんが一人いるだけだ。とても目立つ大きなモニュメントがあり、近づいてみると”1918”と書いてあった。エストニアの独立に関係するものだろう。壁沿いにはためいているのはエストニアの国旗とドイツの国旗。やはりドイツ軍侵攻の歴史の跡が今もあるんだろうか。とにかく綺麗そうな建物の方へ歩いてみる。ガイドブックも持たず事前調べもしていなかったのに偶然日本大使館を発見。これで何かあっても安心だ。

しばらく歩くとローブを羽織って顔の見えない少し不気味な像があって驚く。ダレンシャンのリトル・ピープルを思い出す。ここが街に入る古い門だったらしく、ここから街を見渡すだけでもかなり雰囲気が味わえる。少しずつ坂を上ると今度は大きな宮殿に着いた。そして路地の両側から伸びたエストニアの旗がゲートを作っているように見え、その手前に人の顔の石像があったのでなんとなく「ようこそタリンへ」と言ってもらえているようで旅の始まりを感じた。

窓にはマトリョーシカが並んでいる。そして少し奥まで行くとなんという絶景!タリンの旧市街とその奥に広がるモダンなビル群、そして遠くに見える港とそれを照らす朝日のマッチが最高だった。これを見るために僕はエストニアに来たんだと本気で思った。ずーっと見ていられる。写真には収まりきらない。すると不意に後ろから日本語が聞こえてきた。50代くらいの日本人のご夫婦が同じ景色を見にここに来たらしい。その手にはガイドブックが握られている。やはり、絶景スポットなのだ。よしっ!前情報なしでここにたどり着いている自分を心の中で讃えてご夫婦に話しかける。どうやら家族3人でのバルト三国旅行だとか。そのご夫婦から近くにもう一つ展望ポイントがあると教えてもらえた。早速行ってみる。するとそこは例の「タリン 画像」で出てくるあの景色だったのだ。これはさすがに教えてもらわなければ行けないようなところだった。しかし日本にもよくあるコインを入れるタイプの双眼鏡が置かれていたのでやはり観光スポットなのだ。

 

そろそろ朝食にしたい。仕事を始めて以来、休日の朝にお店でのんびりとコーヒーを飲むのが小さな夢なのだ。しかしまだお店が開いていない。大きな教会や市庁舎のある広場など、店は沢山あるのに一軒もやっていなかった。かといってHesburgerというチェーンのバーガー屋には入りたくない。途中に歩いたこの公園が有名なタムサーレパークだったらしい。看板に開発計画の写真が載っている。なんとこの公園ではWi-Fiが使える。流石IT大国。さらに進むとデパートの地下のスーパーが開いているのを発見。ここで朝食を買おう。どうやらRimiというスーパーらしい。造りはドイツのスーパーとよく似ている。入るとすぐにタリンのお土産コーナーがある。とりあえず水とパンとポテチとお土産用に”Tallinn”と書かれたチョコレートを買う。なぜこの日にお土産を買ったのかは自分でもわからない。これからずっと持って移動しなきゃならないのに。ホステルに戻る途中で昨夜歩いたのと同じ道だとようやくわかる。スーパーの安いパンなのに柔らかくて結構うまい。これは当たりだ。部屋に戻ると2人はまだ寝ていた。開けておいたカーテンが閉められているから一回起きたはずだ。残りのパンを食べながら今日の予定を考える。エストニア第2の都市タルトゥ、電車で2時間半、ここにしよう。