ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

エストニアパン⑮何の為に口がある

翌朝はディオンと一緒にジムに行く気満々だったのだが、室内用の運動シューズがないと入れないと言われた。ホステルに帰り洗濯をしてふて寝する。次の予定はどうしよう。日程に余裕はあるので3日くらい歩いてタリンまで帰ろうかと無謀な計画を立てる。

ディオンに別れを告げ、ポストカードを出しに郵便局へ向かう。ホステルのスタッフから教えてもらった場所が見つからないので、近くを通りかかった人に尋ねることにした。すると「着いて来て」と言われ路地裏を抜け郵便局に辿り着いた。こんなのわかんないよ。

ポストカードを出した後は現金を引き出したくてATMに入る。しかしどこにもVISAのマークがないのでそこにいた作業員に尋ねると「使えるよ」だって。そしてちゃんと使えた。

困ったら近くの人に聞きなさいと子供の頃から母親に教えられている。何の為に口があるんだ、と。そしてそれを遠いエストニアで実践している。

 

この街にもおなじみのRimiというスーパーがあり、食料を調達する。「Rimiは外さない」これはこの旅の重要事項だ。いろいろ調べたけど、本当にタリンまで歩ける自信はない。だったらタリンまでの中間地点であるラプラという街に行こうと思い立ち、バスステーションで尋ねるとラプラ行きの路線はないと言われる。うーん、困った。更に調べるとラプラの近くにMärjamaaという人口3000人ほどの小さな町があり、そこにはバスが停まるらしい。Märjamaa?ドイツ語読みでメルヤマ?マルヤマ?面白いので丸山と呼ぶことにしよう。丸山には一軒だけ安いホステルがあることもわかったので、ネットで予約してバスのチケットも買い、バスに乗り込む。今度ばかりは大きな町じゃないので乗り過ごしのないようスマホの地図と見比べながら丸山に向かう。着いたバス停で降りたのは僕の他におばあちゃんが一人だけ。バス停の周りにも大きな建物が見当たらない。ついに僕はエストニアのど田舎に来てしまったのだ。とりあえず地図上でホステルのある方へ歩く。そもそも第一村人にすら出くわさない。誰もいない町だと不安なんですが・・・。

5分程でホステルのある2階建ての建物に到着。しかし入り口がわからないので1階の肉屋に尋ねる。今日は尋ねてばっかりだな。すると肉やは隣のペットショップを紹介してくれ、そのペットショップは裏にいるおじさんを紹介してくれた。たらい回しかよ。どうやらこのおじさんがホステルの管理人らしいのだが、どこかに電話して「泊められない」とぶっきらぼうに断られた。いや僕はさっき予約したんだとスマホの画面を見せて説明しているとおじさんに着信が入りまたぶっきらぼうに「着いて来い」と部屋に通してもらえた。部屋を与えてもらえたのはよかったけど、これは明らかに直前まで誰かがいてまだ掃除されていない部屋じゃないか!おじさんがてきぱきとシーツを取り換え、シャワールームを掃除するんだけど、そんなところ見たくないよ。と言いつつ田舎は面白いなと思っている自分もいた。