先日初めてジブリ美術館に行った。
観光客に大人気の場所で行きたくてもなかなかチケットが取れないと言われるスポットで、しかもコロナ禍で真っ先に休業を発表、営業再開もかなり遅く慎重さを極めていたことでも知られている。
入場人数も制限している中、今回たまたまそのチケットが手に入ったのだ。
結論から言うと、めちゃくちゃ面白かった!
ジブリ作品にさほど詳しくない僕でも知っているキャラクターはいるし、館内で上映される10分程度の短編に登場するキャラクターがあちらこちらで案内してくれる仕組みになっているので、自然と愛着が湧いてくる。
そして最も僕の心を震わせたのが展示室だ。
一本のアニメ作品を作るのにどれだけの人手と時間がかかっているかが、実際に使われた絵コンテやメモ、道具類を通して伝わってくる。
その製作過程を紹介するマンガをわざわざ宮崎駿が描いているというのもポイントだ。
さらに特別展ではこれまでの企画のダイジェストが見れるようになっており、その企画を行う過程までしっかりと説明してくれている。
大人が集まってアイデアを出し合い、工夫と苦悩を重ね合わせ、一本の作品を完成させていく様を宮崎駿は「荒波を行く航海だ」と表現していた。この展示を見ればこれが仕事というものだと感動する。そして自分もまた明日から頑張ろうと思えてくるのだ。
そんなメッセージを受け取りながら展示を読む僕の横を人が通り過ぎる。
「あ!トトロだー!」
「千と千尋は見た!」
「見てー、ラピュタ!」
知ってる作品を見つけては一目散にそこに向かって絵を見てまた次へ…。
子供はそんなものだろう。しかし大人同士で来ている客もそういう人がいたことが残念だった。
別に展示の見方なんて人それぞれだし、僕とは違う観点で感銘を受けているのかもしれないけど、こんなに充実した展示を「はいはい」と流し見して過ぎ去ってしまうことが残念に思えてしまったのだ。
僕はじっくりと考える時間を大切にしたい。
そういえば最近似たようなことがあった。
大人気のドラマ『半沢直樹』だ。近年のテレビ番組の中でも抜群の視聴率を叩いたので知っている人は多いだろう。
このドラマの特徴はなんと言っても歌舞伎上がりの俳優達の迫力ある台詞回しだ。しかも今回のシリーズは7年前のシリーズに拍車がかかって強烈な台詞が多かった。
そして流行りのドラマの名台詞は日本中でムーブメントを起こす。銀行や証券会社、政治を舞台にしたドラマにも関わらず子供の間にも流行っているほどだ。
しかしそれでいいのだろうか。今回のドラマの端々には、今この日本の様々な現場で働く人への“仕事”に関する熱い熱いメッセージが詰まっていたはずだ。なのにその場面よりもインパクトのある面白い場面ばかりがフィーチャーされることに悲しみすら感じるのだ。
子供はそれでいいだろう。パッと見てわかりやすい物に反応してしまうのはよくわかる。
だけど大人もそうじゃいけない。わかりやすい物につられて振り回されているようじゃダメだ。自分の意思で立って自分の頭で考えて自分の心で感動するべきだ。
少々押し付けがましくなってしまったが、僕はそうありたいと思っている。