ソートベーカリー

小麦粉をこねてパンを焼くように、頭の中で考えたことを文章にしていきます。

使う人の自由パン

前回、根津孝太さんの本『アイデアは敵の中にある』を紹介しました。

コミュニケーションを大事にするパン - ソートベーカリー

 

トヨタで働いていた根津さんは本書の中で、今の自動車は以前のように車好きが部品をいじったりできる範囲が狭くなり触ってはいけない箇所が増え、できるだけ商品そのままの状態であるよう注意喚起されていることを嘆いています。これはメーカー側の自衛手段として仕方ないと理解はしつつ、しかしなるべくクレームがつかないよう、企業が責任を負わないで済むような対応になってはいないかと問題提起し、ついにはお客さん自身でどんどん触って部品をいじって工夫を凝らすことのできる車『カマッテ』をデザインしたという経験談を記しています。

 

この話から、近年おもちゃのレンタルサービスが増えていることを思い出しました。毎月数千円で子供の年齢に合わせたおもちゃをレンタルでき、返却してまた別のおもちゃを届けてもらえるというサービスです。おもちゃを置いておくスペースのない家庭やあまり沢山は買うことのできない家庭でも、子供が年齢に合ったおもちゃで遊べることで人気を博しています。

しかし、これはつまり返却することが前提なのでおもちゃを壊してはいけない、キレイに遊ばなくてはいけないということだと思うのです。年齢が過ぎて遊ばなくなったおもちゃをネットで売ろうと考えている家庭ももしかするとそうかもしれません。

だけどどれだけ「キレイに遊んで」と言っても衝動を抑えられないのが子供だし、思いっきり遊びたいという気持ちを大人側の事情で抑えるべきではありません。だったらむしろ、クレヨンで書き込んだり、おもちゃ自体を凹ませたりして「自分のもの」にできるおもちゃがあってもいいんじゃないだろうかと考えるようになりました。

レンタルサービスを否定するつもりはありませんが、子供の頃沢山遊んだおもちゃについては大人になっても覚えているものです。傷があったって、自分の子供にも遊ばせたいと思う人も多いかもしれません。僕はおもちゃ業界に携わる一人として、根津さんのように使い手に自由が委ねられたおもちゃを扱っていこうと学びました。

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